7396.jpg
転勤、職務転換なし「限定正社員」普及は進むか…正社員との待遇差、雇用の保障は?
2017年07月03日 09時52分

政府の働き方改革の議論が進む中、企業も週休3日制の導入など、様々な改革を始めている。その1つが、ジョブ型正社員(限定正社員)制度だ。政府の規制改革推進会議でも4月13日、ジョブ型正社員(限定正社員)の普及に向けた公開討論会が開かれた。

この日、配られた資料によれば、ジョブ型正社員は「職務、勤務地、労働時間のいずれかの要素(又は複数の要素)が限定されている正社員」のことだ。会議では、ジョブ型正社員という名称が使われているが、すでに導入した企業によっては「限定正社員」と呼ばれることもある。

働き方の多様性につながる制度ではあるが、導入の課題はないのだろうか。野澤裕昭弁護士に聞いた。

政府の働き方改革の議論が進む中、企業も週休3日制の導入など、様々な改革を始めている。その1つが、ジョブ型正社員(限定正社員)制度だ。政府の規制改革推進会議でも4月13日、ジョブ型正社員(限定正社員)の普及に向けた公開討論会が開かれた。

この日、配られた資料によれば、ジョブ型正社員は「職務、勤務地、労働時間のいずれかの要素(又は複数の要素)が限定されている正社員」のことだ。会議では、ジョブ型正社員という名称が使われているが、すでに導入した企業によっては「限定正社員」と呼ばれることもある。

働き方の多様性につながる制度ではあるが、導入の課題はないのだろうか。野澤裕昭弁護士に聞いた。

●ジョブ型正社員、導入の課題

「ジョブ型正社員は労働者のニーズ(育児や介護、特定の職務に限定して専門性を発揮したい等)や非正規労働者が正社員にステップアップする通過点として活用する等に有用とされています。

しかし、既に、多くの企業で労働者のニーズに合わせた働き方が導入されており、新たに法制度として新設する必要性が乏しいと言われています。労働組合や厚労省が『消極的』とされる背景にはこうした事情があります」

導入に際して、どのような課題があるのだろうか。

「ジョブ型正社員制度を導入する場合、まず、限定する職務内容が明示されることが必要です(労働条件の明示)。次に、正社員と賃金水準や昇進などの処遇で差を設けることが予想されますが、その差は限定した職務内容に応じた合理的なものであることが必要です。

職務内容によって賃金水準などの処遇に差を設けること自体は法律上の問題はありませんが、ジョブ型正社員であるというだけで賃金を低くすることは不合理な差別になり許されません」

●「最も懸念されるのは整理解雇の対象になること」

ジョブ型正社員から正社員、あるいはその逆など、途中で転換することは認められるのだろうか。

「転換制度は必要です。労働者のニーズに合わせた働き方が目的ですから、ジョブ型正社員となった後も、必要に応じて正社員になる道が残されるべきです。

転換制度では、特に正社員からジョブ型正社員への転換が問題となります。この場合、ジョブ型正社員への転換に伴い、賃金の引き下げ等労働条件の不利益変更をされることが予想されます。労働者の同意なしにこうした転換は許されないとするべきです」

この他、何か懸念される点はないだろうか。

「最も懸念されるケースとしてジョブ型正社員を整理解雇の対象とする場合が考えられます。

処遇面で述べたとおり、整理解雇の場面でもジョブ型正社員であるというだけで優先的に解雇することは決して許されません。ジョブ型正社員も整理解雇の有効要件を満たすかどうか、正社員と同様に検討されるべきです。総じて、ジョブ型正社員という名前で労働条件を曖昧にしたり、差別すること防止することが課題となると思います」

(弁護士ドットコムニュース)

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る