犯罪・刑事事件の解決事例
#相続人調査 . #遺産分割 . #財産目録・調査

被相続人が亡くなる一週間前に長男の長男(孫)を養子にし、その養子に全財産を相続させるという公正証書遺言を作成。長女の依頼を受け、被相続人と孫との養子縁組は認める代わりに遺言は無効にさせる。

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大村 隆平 弁護士が解決
所属事務所雨宮眞也法律事務所
所在地東京都 中央区

この事例の依頼主

女性

相談前の状況

お父様を亡くされた長女さんからのご依頼でした。お父様が亡くなる1週間前に、お父様が、お兄さんの子(お父様の孫、依頼者様の甥)と養子縁組をして、その養子に全財産を相続させるという公正証書遺言を書かされたということでした。お父様は認知症を患っていたので、養子縁組をすることも、公正証書遺言を作ることもできるわけがないとのことでした。依頼者様とお兄さんは、お父様の財産を2分の1ずつ相続できるはずだったのに、養子縁組と公正証書遺言の効力が認められたら6分の1ずつしか取得できないことになります。当然、依頼者様もこんなことには納得できないわけですが、お兄さんも、お父様と養子縁組をしたお子さんとは以前から仲が悪く、依頼者様同様、養子縁組と公正証書遺言に納得できないとのことでした。ただ、裁判で争うとなると年単位の時間がかかることは明らかでしたが、相続税の金額が大きく、相続税を支払うためには、相続人全員の同意のもとで遺産を売却する必要がありました。そのため、いきなり裁判で争うのではなく、裁判外の交渉からスタートしました。

解決への流れ

裁判外の交渉の結果、相続税申告期限前に「養子縁組の効力は認める代わりに、公正証書遺言は無効とする」ということで合意ができました。依頼者様よりも、お兄さんの方が養子縁組の効力を認めることに難色を示されていましたが、最終的にはお兄さんも納得してくれました。結果として、相続税申告期限前に、遺産を売却して納税資金を用意することもできました。

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大村 隆平 弁護士からのコメント

養子縁組と公正証書遺言、両方とも無効にさせることができればベストでしたが、そのためには確実に年単位の時間が必要で、到底相続税の申告納付期限(相続開始から10か月後)には間に合いませんでした。よく、一方の相続人から他方の相続人が「相続税申告期限に間に合わせるために、この遺産分割協議の内容で同意せよ」と要求されることがあります。しかし、相続税申告期限までに遺産分割が成立しないのであれば、未分割で申告し、法定相続分相当額の相続税をそれぞれが納付すれば特に問題はありません。ですから、相続税申告期限までに慌てて遺産分割協議を成立させる必要はありません。しかし、この事件では、遺産及びそれにかかる相続税の金額が莫大であったため、どの相続人もとても自己資金では相続税を納付できる状況ではありませんでした。そのため、仮に裁判で徹底的に争うとしても、「相続税を納付するために、遺産の一部はみんなで協力して売りましょう」という話し合いをする必要がありました。どの道、話し合いは絶対にする必要があるのであれば、いきなり裁判をしてケンカ腰になるよりは、「まずはみんなで穏やかに話し合いましょう」という流れになりました。そしてその流れのまま、「養子縁組の効力は認める代わりに、公正証書遺言は無効にする」という合意ができました。交渉が不調に終わると、「何年もかけて争ったが、結局、養子縁組も公正証書遺言も有効。しかも、相続税も支払えず延滞税もかかる」という最悪のケースも想定されました。そのような状況を回避し、相続税申告期限前に合意が成立し、無事に遺産を売却して、相続税の納付も終えることができましたので、一定の成果は上げることができたかと思います。