この事例の依頼主
30代 女性
私はA国人ですが、平成10年ころ、氏名を偽り、偽造パスポートで日本に入国し、ばれることなく、そのまま何年も生活していました。そのうち、私は既婚の日本人男性Bと恋愛関係になり、子供Cを産みましたが、出生届の母の欄には、いつも使っている偽名を記載して役所に提出しました。なお、Bは、Cの認知はしていませんでしたので、CはA国籍でした。さらにその後、私はBとの間に、2人目の子であるDを出産しましたが、Dについては、Bが胎児認知をしたため、日本国籍を取得し、Dが筆頭者の戸籍も作られました。しかし、Dの戸籍の母の欄には、やはり私の偽名が記載されました。その後、私は日本での滞在が長年にわたったため、永住許可の申請をしたところ、私が偽名であることがばれてしまいました。そのため、私と、A国籍であるCは、直ちに入管による強制退去手続下に置かれることになりましたが、CもDも幼く、私が面倒を見なければならなかったためか、仮放免許可を得ることができ、収容は免れました。私は、偽名で日本に入国し、生活してきたことを深く反省し、後悔しました。Bは、近いうちに奥さんと離婚し、私と再婚する予定でしたので、私は、これから始まるであろう、B、C、D、そして私の4人家族の生活を心待ちにしていたのです。そして、同じ両親から生まれた兄弟でありながら、Dと国籍が違うCに、日本国籍を取得させたいとも考えていました。しかし、そのために、どのような手続をすれば良いかがわかりませんでしたので、弁護士に相談することにしました。
弁護士の話では、Cが日本国籍を取得するためには、Bによる認知が必要ですが、その際にCの出生証明書の提出が必要になるところ、母の欄には私の偽名が記載されているため、これを本名に訂正しなければならないとのことでした。また、Cの日本国籍取得とは別の話になりますが、Dの戸籍にも、母である私の欄には偽名が記載されているため、これも訂正した方が良いとのことでした。色々と複雑な手続が必要になるようでしたので、私やBだけではとても対処できないと思い、Cの出生届の記載事項と、Dの戸籍の記載の訂正手続を依頼することにしました。また、当時、私とCは退去強制手続下にありましたが、日本国籍であるDを育てていることから、Cとともに「定住者」の在留資格を取得できる見込みがありました。そこで、戸籍等の訂正の手続の進捗について、弁護士には、入管にも私の代理人として連絡を取ってもらい、報告をお願いすることにしました。裁判所での手続の結果、Cの出生届にも、Dの戸籍にも、私の本名が記載されることになりました。また、私もCも、「定住者」の在留資格を取得することができました。今後は、Cの日本国籍取得に向けて、Cの、A国での出生登録の訂正を行うことになります。
本件では、Cが日本国籍を取得するには、Bによる認知が必要ですが、その際に、A国で登録されたCの出生証明書か、日本で出されたAの出生届記載事項証明書の添付が必要になります。しかし、いずれの書類にしても、Cの母親の氏名が虚偽であるため、まず虚偽の記載を真実の内容に訂正する必要がありました。この点、日本で出されたAの出生届の記載事項の訂正をする方が簡便ですが、このような訂正は役所ではできないため、裁判所の手続を経る必要があります。そこで、どのようにして出生届の記載事項の訂正をするかが問題になります。我が国の戸籍法には、113条から116条に、戸籍の訂正についての規定が置かれていますが、出生届の記載事項の訂正について定めた条文はありません。そのため、本件では、戸籍法113条を類推し、出生届記載事項訂正許可審判を家庭裁判所に申し立てました。すなわち、CはA国籍の外国人であり、戸籍というものがないわけですが、日本にいる外国人が出生・死亡した場合は、戸籍法上、届出義務が課せられており、出生届は、外国人の身分関係を公証するものとして、日本人の戸籍に準ずる重要な証明書類となるものです。そのため、外国籍の子が身分関係の成立を立証するには、このような届書によらざるを得ません。したがって、外国人の出生届書類の記載に錯誤ないし遺漏があることを発見した場合は、出生という身分関係に関する事柄であることに鑑み、その届出人である外国人は、戸籍法113条類推適用により、届書の訂正の許可を家庭裁判所に申請することができるものというべきであり、本件もこの考えにしたがって、審判を申し立てたところ、問題なく認められました。あとは、A国での手続を経てから、認知をすれば、Cは日本国籍を取得できることになります。また、Cの国籍取得とは直接関係ないことですが、本件では、Dの戸籍の母の氏名も虚偽であったため、これも戸籍訂正許可審判を申立て、訂正してもらうことができました。このように、戸籍訂正等が問題になる案件の場合、当事者だけで対処しようとすると、日本の役所・大使館・裁判所それぞれの見解が異なったりして、たらいまわしにされるだけで時間ばかりが経過し、具体的な手続がなかなか進まず、お困りになるケースがまま見受けられます。そのような時は、すぐに弁護士に相談することで、的確な方針を立てることが可能になり、時間や費用の節約にもなりますから、是非ご検討下さい。